昆虫食界を牽引する内山昭一先生に独占インタビュー -なぜ昆虫食に目覚めたの?-

昆虫食界で知らない人はいない、NPO法人昆虫食普及ネットワーク理事長の内山昭一先生に幼少期から現在までの昆虫食経歴、将来の展望についてお伺いしました。

プロフィール

内山先生
1950年に長野県長野市で生まれ、30歳過ぎまで地元で過ごし、大手IT会社の試験検査部に所属し、試験機のプログラムを書き、エラーを探す虫取り(debug)をしていました。
その後、知り合いの本屋で働き、1984年にロシア語の勉強のために上京しました。

最初は良いイメージのなかった昆虫食。変化したきっかけは?

河東
はじめに、昆虫食についての最初の思い出をお聞かせください。
内山先生
小学校1年生の頃、長野の実家で食べたカイコの蛹が1番最初ですね。

当時は業者の方がカイコの蛹を売りに来るんですよ、祖父が好きだったので、栄養があるからと言って野菜といためたものをご飯の上に乗せ、半ば強制的に食べさせられました。
特に家で煮たカイコの蛹は酸化していて独特な臭みがあるので、初めて食べた時はおいしいと思わず、昆虫食に対して良いイメージを持たなかったですね。

河東
そこから昆虫食にハマったきっかけは何でしたか?
内山先生
東京都の多摩動物公園で行われた「食用昆虫展」に参加したことがきっかけです。

友達に誘われて3人で行きました。
昆虫食にいいイメージがなかったので、前のめりではありませんでしたが、会場が家から近く昆虫が好きな友達に誘われたので行きました。

河東
そこで印象に残ったことは何ですか?
内山先生
一番驚いたことが、世界では現在でも20億人が2000種の昆虫を食べているという話でした。
あんなまずいものを今でも食べられていることを不思議に思い、仲間と一緒に多摩川で試しに食べてみようということになったんです。

河原でバッタを採取して、そのまま素揚げで食べてみると、エビみたいで美味しかった。
そこでおいしい昆虫もいるんじゃないかと思うようになり、3人が中心になって活動が始まりました。

仲間が増えて、昆虫料理研究会から現在のNPO法人昆虫食普及ネットワークまで至りました。
あの時の1人は今はもう昆虫を食べていませんが、もう1人は阿佐ヶ谷の「よるのひるね」のマスターになり、昆虫食のイベントをさせてもらっています。

河東
昆虫を食べるようになり、周りの反応はどのようでしたか?
内山先生
いきなり昆虫を食べ始めたから初めは妻も驚いていました。
しかし妻も長野県出身で昆虫食自体には否定的なものはなく、現在は料理のレシピを一緒に考えてくれる、ありがたい存在だと思って感謝しています。
河東
息子さんがいらっしゃるとのことですが、お子さんも昆虫を食べますか?
内山先生
息子は子どものころは試食会について来てたくさん食べたけど、今は食べてないですね。
息子は昆虫採集が好きだったので、一緒に標本づくりを行い、夏休みの自由研究などに活用して、その流れで食べるようにもなっていきました。

ただ大きくなるにつれて昆虫食に興味がなくなったようで、「昔いっぱい食べたからもういいや」と言って、今は全く食べていません。

河東
内山先生自身、昔から昆虫に馴染みがあったんですか?
内山先生
幼稚園の頃にオケラを採って遊んだのが楽しい思い出ですね。
田植えのときに代掻きするんですが、その時に田んぼから出てくるオケラを何匹か捕まえて、糸でマッチ箱に縛って引かせて競争させて遊びました。

食べるための採集の出会いは、祖父と共に川でフナやドジョウやナマズなどを取って食べていた時期があり、この体験が僕の昆虫食の原点になっていると思います。

河東
現在は日常的に昆虫を消費していますか?
内山先生
基本的に毎日食べます。現在は納豆を家で作っていて、納豆菌をいれる際に一緒にコオロギパウダーを入れます。
タンパク質を増やすのと、納豆菌へのごちそうのつもりもあって。ただコオロギの味はしませんけど。

前は豆の代わりに蜂の子やカイコの蛹を使用し、虫納豆をつくっていました。
納豆菌は今では市販を使ってますが、当時は川べりの枯草を刈ってきて入れてました。

河東
昆虫食にかける1か月の費用を教えてください。
内山先生
月1万程度です。基本採集するのでお金はかからないのですが、購入することもあります。
例えばザザムシを業者から仕入れたり。

現在の取り組み:イベントにはどういった人が来るのか?

河東
現在、NPO法人昆虫食普及ネットワークの理事長として活動されていますが、どのような活動を行っていますか?
内山先生
セミ会やバッタ会などの採集体験を伴ったイベントや、米とサーカスで昆虫の調理と実食を行う昆虫料理教室、昆虫食を広く理解してもらうための展示会など、イベントを中心に手広く活動しています。
河東
会にはどのような人々が集まりますか?
内山先生
好奇心旺盛で面白い人が多いので、自分自身の刺激になります。

構成する人は若い人が多いです。採取の活動があるイベントは男性が多く、調理がメインのイベントは女性が多い印象です。

河東
FAO報告書発表以降で変化は感じましたか?
内山先生
あります。
以前は趣味のサークル感、いわゆるゲテモノ色が強く、世間からはプラスの印象ではなかったです。

マスコミが「昆虫が世界を救う」といった文言で取り上げたことにより、研究目的で参加する人が増えました。
ただ昆虫食の環境的側面を強調することで、コオロギ騒動(コオロギに関するデマ情報)などがSNSで拡散され、批判の声が大きくなり昆虫食業界が衰退してしまったと感じています。

今まで伸びていたビジネスが沈静化して、今若干回復してきているという状況かもしれませんね。
環境に良いやタンパク質などの面を強調しすぎた気がしますね。

僕も原点に返って、食品としての昆虫のおいしさを演出できるような流れが必要だと思います。
強制的に昆虫を食べさせる風潮は昆虫食業界全体が反省すべき点だと思います。
SDGsとして売り出す企業は減少すると考えられます、そもそもSDGsでやるっていうのは昆虫食の本道ではないのかもしれないですね。

河東
SDGsの次に何が来るか気になりますね。

今後の目標と野望:100億円で実現したいこととは?

河東
現在の目標は何ですか?
内山先生
食べていない昆虫を一種ずつ制覇していくことでしょうか。
河東
突拍子もないですが、100億円もらえるなら何をしたいですか?
内山先生
世界の食用昆虫2000種を生きたまま集め、その昆虫が食べられるレストランも併設した「世界食用昆虫館」を開設したいですね。
河東さん頑張って100億円集めてください(笑)
河東
頑張ります(笑)

インターン生 河東 佑奈