なぜ多摩市にはセミが多いのか。理由は都市公園の多さにあった

多摩市にはなぜセミが多いのか。

この話題は世の中の99.99%の人が関心のないことだと思います。

しかし、私たちには大いに関係のあることでした。

というのも、私たちの活動のはじまりが、多摩市にセミが多いなと感じたことからだったからです。

実感としてはわかっていても、理論としてはわからない。

そんなモヤモヤがあったのですが、この度解決しました!

おいしい昆虫記

そのきっかけがこちら。

佐伯真二郎さんのおいしい昆虫記です。

こちらには、筆者である佐伯さんの昆虫食に関わるきっかけから、その後ラオスで昆虫の養殖に携わる取り組みまでが書かれているのですが、その中でセミ会について触れられています。

また、セミたまではTAKEOさんで行われたこちらの本のサイン会にも参加したのですが、その場で佐伯さんにセミについてのお話を伺った中で、多摩市になぜセミが多いのかが明らかになりました!

多摩市にセミが多い理由は都市公園の多さ

多摩市は市民1人当たりの市立の公園面積が東京の26市の中で1位です。

実は、この都市公園とセミが絶妙な関係性にありました。

セミの育ちやすい環境が整っている

自然環境の中では木から落ちた葉っぱは腐って腐葉土となります。

この腐葉土はふかふかな土で、いろいろな虫の住処になっています。

しかし、都市公園の場合は、落ち葉が清掃されます。

そのため、腐葉土が生まれることはなく、乾燥した固い土が残ります。

そうすると、腐葉土を必要としていた虫は育つことができません。

また、土が固いため、地上で生まれた後に土の中に虫が入ろうと思ってもなかなか入れません。

一方、セミの幼虫は前足の力が強いため、固い土でも掘ることができます

そのため、他の虫は無理でも、セミは土の中にもぐることができるため、土の中を独占的に使用できる環境になるという仕組みです。

また、セミを捕食するのは、クモ、カマキリ、鳥などになりますが、そういった天敵が少ないというのも整備された都市公園だからこそという部分があるのではないでしょうか。

セミが目につきやすい環境が整っている

もう1つの都市公園の特徴としては、山よりも傾斜がなく、手の届く範囲の木が剪定されていることがあります。

目線の高さに木の枝があると、人にぶつかって危ないということから剪定されているのだと思いますが、セミを捕まえる側からすると、邪魔な位置に枝がなく、セミが見つけやすいだけでなく、捕りやすい環境にあることがわかります。

傾斜もないので、広範囲を歩いて回りやすいため、多くの木を見て回ることができます。

1本1本がセミを見つけやすい状態にあるだけでなく、そのような木がたくさん、かつ平坦な場所にあるため、捕まえやすい環境がそろっているということですね。

同様なことは幼虫にも当てはまります。

土の上に落ち葉がない状態のため、セミの幼虫が地面から出てきた様子がすぐにわかります

きれいに穴が残っている様子を見たことがある人も多いのではないでしょうか。

森の中など、腐葉土の環境であればセミの幼虫が出てきた穴はすぐにふさがってしまいますが、都市公園の固い土であれば長い間残りやすく、どこからセミの幼虫がたくさん出てくるのかが一発でわかります。

成虫も幼虫も見つけやす環境にあるんですね。

ラオスでの生活経験もある佐伯さんのお話では、ラオス人からすると、あれほど簡単にセミを捕れる環境はないということでした。

そういった点から、日本の都市公園はセミの養殖場としては適した環境なのかもしれません。

多摩ニュータウンとして整備されたまちだからこそ、人が暮らしやすい都市公園が多く、それに適した昆虫がセミということが言えるのかもしれません。

公園ではセミは捕ってはいけない?

すべての公園は、法律や条例などの法令によって、その使い方が制限されています。

ボウル遊び、花火、バーベキューなど、禁止されていることは多いです。

実は、虫捕りというのも制限をされていて、地域によって異なりますが、その点に気を付ける必要があります。

食用でセミを捕らないでという看板の真相。役所に聞いてみた

ただ、これまで見てきた通り、都市公園を整備した結果、セミは多く見られるようになりましたが、都市公園に適応できなかった昆虫は姿を消しているのも事実です。

また、セミは樹液を吸うため、木にとっては害虫という見方もできます。

こちらの記事にもある通り、セミの幼虫は樹液を十分に摂取できる場合は早く成虫になりますが、樹液が少ないところは成虫になるまで何年もかかるという実態もあります。

セミチリの作り方はシンプルで簡単!

人間が生活をする以上、生態系を壊さないということは無理だと思います。

一見公園の整備という自然を残しているように見える状態も人間から見た自然であって、他の生き物にとっての自然、生物多様性を維持するための自然とは程遠いものであることがわかります。

もちろん、全く緑がない状態よりはずっと良い状況だと思いますが、人が管理した自然環境だということを改めて認識した方が良いのではないでしょうか。

そういった考え方からすると、公園で生き物を捕ることは、どの程度まで許容されるものなのでしょうか。

セミについて考えると、例えば潮干狩りのように8月上旬以降は解禁といった形で、自由に捕ることができる時期を決めるというのも一つの解決策になるのではないかと思います。

管理をする側からすると、一律禁止というのは楽ですが、公園の目的は住民の福祉の向上だと思うので、利用者目線からの工夫も期待したいですね。