蚕は昔から養殖をされている昆虫です。
養殖をされた理由は、やはり絹のためですが、当時から餌として与えられていた蚕の食べ物は桑の葉だったようです。
では、なぜ桑の葉なのでしょうか。
養蚕の歴史
蚕の養殖は養蚕と言われますが、実は5000年〜6000年に中国で家畜化したのが始まりと言われています。
もともと王族など一部の人たちだけが行っていた養蚕が、3000年ほど前から一般家庭でも行うようになり、日本には2000年前に入ってきたそうです。
そういった長い歴史を経て、蚕はとうとう人間なしでは生きていけない体になります。
自分では動けず、餌を与えられないと餌を食べられずに死んでしまうという状態に進化?したのです。
「桑の葉しか食べない」はウソ?
蚕は成虫になってからは一切食事はせず、幼虫の時のみ食事をします。その時に食べるのが桑の葉。
なぜ桑の葉を食べさせるかと言うと、蚕が最も早く育つのが桑の葉だからです。もっと正確に言えば、「蚕が好んで食べる飼料の中で最も栄養があるのが桑の葉だから」ということですね。
実は、蚕は桑の葉以外も食べます。具体的には、シャ、コウゾ、ニレなどの葉が食べられるそうです。
ただ、それらを食べたときの蚕の育ちと桑の葉を食べた時の蚕の育ちでは、桑の葉を食べたときの方が成長が早いということで、桑の葉で育てられているようです。
嗜好面では、蚕が好む化学物質が桑の葉に豊富に含まれているということが理由です。
もちろん、他の葉にも同じような成分が含まれているので、他の葉も食べますが、桑が栄養面でも蚕の感じるおいしさ面でも優れているので、桑の葉が食べられているんですね。
味覚の部分だけでいうと、広食性の蚕ということで、いわゆる味オンチの蚕もいるようですが、だからといって、他のものを食べてしまうと栄養が足りずに死んでしまうといったことになってしまうようです。
結論をいうと、蚕は桑の葉以外の葉も食べる。しかし、養殖で最も育ちが良いのが桑の葉なので、桑の葉ばかり与えられている。
ということかと思います。
こういったことから、最近は人口飼料ということで、人工的に作っている餌も出てきているようです。
蚕がより早く成長するような餌が開発されているということですね。
また、桑の葉の場合は育てる必要がありますが、人工飼料であれば既存のものを混ぜ合わせて作れるので、保存期間も長くとれるといったメリットもあるようです。
桑の葉の栄養
桑の葉は、蚕の成長に大きく貢献するものということで、栄養が豊富です。
ビタミンCなどのビタミン類やマグネシウム、カルシウムなどのミネラル、亜鉛や食物繊維などが豊富に含まれているそうです。
そのため、健康食品として注目されていて、青汁などにも活用されているようです。
そんな桑の葉を食べて育っている蚕も栄養的には豊富なはずで、そんな蚕を絹だけでなく、他にも活用しようという考えが出てくるのは当然かと思います。
食品としての蚕
蚕を食べるといった観点からは古くからは漢方の観点で見られていました。
それが蚕のフンである蚕沙です。
中国ではそのまま食べたりもするようです。
フンをお茶にして飲む蚕糞茶もありますね。
桑の葉しか食べないので、フンといっても香りが桑の葉なんですね。
漢方としては、体を温める効果があったり、風疹に効きめがあったりという効果があるそうです。
今回は、蚕の食べ物は何かという点にフォーカスしてみました。
桑の葉を食べているからこその栄養効果というのも大きそうですね。