世の中の昆虫の多くは食べることができます。
しかし、身の回りの食品の多くは、衛生管理の下で販売されているものです。
家の周りの虫を捕って食べるのは、その衛生管理を受けていない状態で食べることです。
身近で簡単に食べられる昆虫ですが、理解しておかないと危険なこともあります。
認識しておくべきリスクをお伝えします。
寄生虫
野生で生きている昆虫には、寄生虫や細菌などが存在する可能性があります。
そのため、生のまま食べることは危険です。
これは、豚肉などを生で食べないのと同じですね。
生のまま食べるのではなく、十分に加熱することが重要です。
多くの場合、加熱消毒によって殺菌することができます。
FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書にも記述があります。
世界的に、昆虫を媒介とした寄生虫が人体に影響を及ぼした事例はないようです。
有毒な昆虫がいる
昆虫の中には有毒のものもいます。
毒キノコがあるのと同じです。
有毒な部位を除く必要があるものもあります。
そのため、よくわからない虫は食べない。
もしくは調べてから食べるようにしましょう。
アレルギーは加熱では防げない
エビやカニなどの甲殻類アレルギーの人は避けた方がよいとされています。
甲殻類アレルギーのもとになるトロポミオシンが、昆虫にも含まれているからです。
これがどの程度なのかを、国が調べています。
2023年度から2024年度にかけて、市販の昆虫食47種類が対象になりました。
47種類すべてから、トロポミオシンに反応するタンパク質が検出されました。
原料はカイコ、コオロギ、ハチ、アリ、バッタ、タガメ、セミなど多岐にわたります。
加熱については、2023年度に12種類で調べられています。
非加熱の製品に比べて、加熱加工された製品で抗原性が下がることは認められませんでした。
理由は食品安全委員会のファクトシートに書かれています。
甲殻類(えび、かに)の主要アレルゲンであるトロポミオシンは、加熱により変性しますが、冷却することにより元の構造に戻ることが報告されており、熱に対して安定とされています。
寄生虫や細菌は火を通せば対処できます。
しかしアレルギーはそうではありません。
ただし、甲殻類アレルギーの人が必ず症状を起こすという意味でもありません。
報告書も、実際に人にどの程度の影響があるかは、さらに調べる必要があるとしています。
何を食べて育ったかは分からない
天然の昆虫なので、何を食べているかは分かりません。
毒性のある植物を食べている虫もいます。
その虫を食べれば、毒も一緒に食べることになります。
自然にいるものを捕る場合、ここは避けては通れない部分です。
同じ調査で、食用昆虫63検体の有害元素も調べられています。
カドミウム・ヒ素・鉛・水銀の4つです。
一部の検体から高い値が出ました。
| 元素 | 最大値 | 検体 |
|---|---|---|
| カドミウム | 6.88 ppm | スジアカクマゼミの幼虫(タイ産・乾燥品) |
| ヒ素 | 17.45 ppm | カブトムシの成虫(タイ産・乾燥品) |
| 鉛 | 13.56 ppm | 黒アリの卵(乾燥品) |
| 水銀 | 0.963 ppm | カブトムシの成虫(タイ産・乾燥品) |
いずれも乾燥品なので、成分が濃縮されています。
報告書は、昆虫の表面に土壌の粒子が付いている可能性も否定していません。
洗えばどれだけ減るのかは、これから調べる必要があるとされています。
ヒ素と水銀は化学形態で毒性が変わるため、形態別の分析も必要とされています。
つまり「食べたら危ない」とも「問題ない」とも、この調査だけでは言えません。
市販品なら安心、とは限らない
養殖され、衛生管理された環境で作られた昆虫食。
自分で捕るより条件が整っているのは確かです。
ただし、上に挙げた調査の対象はすべて市販品でした。
国内に流通している食用昆虫を買い集めて調べたものです。
細菌と真菌についても、31製品が調べられています。
非加熱の製品では、生菌のブドウ球菌属や真菌が比較的高い頻度で見つかりました。
黄色ブドウ球菌やセレウス菌に留意する必要がある、と書かれています。
市販品だから何も気にしなくてよい、ということにはならないようです。
そして日本には、食用昆虫の有害元素の基準値がまだありません。
国の研究は2023年度から2025年度までの計画で進められました。
分かっていないことは、まだ残っています。










