きっかけ
2018年1月、多摩市の方にお声かけいただき、エコフェスタ多摩という場所でセミを捕って食べることで地域を活性化しようという提案をしたことがあります。
その名の通り、エコに関心のある方々が集まる会で、子どもから大人までさまざまな方がいらしたのですが、私たちは多摩市にたくさんいるセミを捕って、食べて、セミが少なくなったら夜セミがうるさいという苦情なども少なくなるのではないかという提案をしました。
そうしたところ、そこにいた小学生からこのような質問が来ました。
セミを捕りすぎたら生態系をくずことになるのではないかと。
鋭い質問だなと思いました。
そして、環境に関心のあるからこその観点だなと思いました。
もともとの考えでは、食べつくすことで静かなまちをという考えも含めていましたが、現在は生態系についての配慮をする必要があるという考えに至っています。
セミの声のしない静かなまちの実現ではなく、セミをもっと身近に感じて、うるさい存在ではなくすというのがゴールになるかと思います。
ここで、昆虫食として生態系へ影響のない形にするためのポイントについてまとめておきたいと思います。
たくさん取り過ぎないこと
当たり前のことですが、捕りつくしてしまってはセミもいなくなります。
たとえば、1日1000匹も2000匹も1つの地域で捕っていたら大きな影響が出ると思います。
また、幼虫の場合は卵を産む前に捕ることになるので、特に気を付ける必要があります。
元気な成虫ほど高いところにいる
成虫を捕るという観点からいうと、私たちが捕まえられる低さにいるセミというのは、成虫になってから日数が経っていて、元気がなくなっているセミになります。
卵を一定程度産み終わっている可能性が高いです。
そのため、その状態のものを採集しても大きな問題にはならないのではないかと考えているところです。
天然物には限界
現段階では日本のセミは牛肉や豚肉のように好んで食べられるものではありません。
そのため、誰もが簡単に手に入るものでもなければ、手に入れたい、食べたいと思われているものでもありません。
将来的には日本でも昆虫食は増えていくと考えていますが、その時には養殖もされはじめると思います。
事実、中国ではセミの幼虫を養殖しているところもあるようです。
日本人もすでにコオロギの養殖を始めている人がいたりと、これからは昆虫の養殖も普及していくのではないかと思います。
産業として実施する際にはセミの養殖ということが必要になってくるでしょう。
既存の生態系を壊さないよう捕り過ぎないように意識すること。
セミが生育できる環境を整えること。
といった点が大切になるのだと思います。
今後、昆虫食、セミを食べるということが生活に馴染んでくるとしたら、捕ったセミを種類ごとに数を数え、専門家のアドバイスをいただきながら、減っている種類は食べないなどの配慮も必要でしょう。
私たちの実施するセミ会は約40人で1日で200匹ぐらいの成虫を捕ります。
この程度であれば、大きな影響はなく、また捕るのはセミを捕るのが素人の人がほとんどのため、低いところにいるすでに卵を産み終わったと考えられる元気のなくなったセミが中心です。
そんなセミを通して、命の大切さを知ったり、生態系について思いを巡らせたり、食料不足の世界に目を向けたりといった機会になるのがセミ会です。
そういった点では、セミ会も持続可能なイベントとして考えられるのではないでしょうか。
日本でもすでに捕りすぎが発生していた
実は、日本でも昆虫食が人気過ぎて、規制が入っている事例が2つあります。
自然保護の観点から、捕り過ぎた場合は採集を規制する。
また、商業的に活用するために養殖をするという方法が以前から採られていたようです。
ざざむし
ざざむしというのは、川の浅瀬に住む水生昆虫の総称のことなのですが、天竜川のざざむしも大量に捕られて絶滅の危機に瀕しました。
そこで50年以上前から鑑札制になっています。
つまり、許可証を持っている人だけが捕れるものですね。
許可証は虫踏許可証と呼ばれ、天竜川漁業協同組合が発行しています。
しかも、採集ができるのは12月から2月までという限られて時期のみとしているようです。
ただ、許可証が必要なのは本漁協の管轄エリアのみなので、それよりも上流や下流だと許可証は不要なようです。
蜂の子
蜂の子というのは、その名の通り、蜂の幼虫やサナギになります。
蜂の幼虫はサナギは巣の中にいるため、巣を捕るんですが、その巣を作るクロスズメバチの個体数が減るということが起きています。
1990年には、岐阜県中津川市(旧:加子母村)でクロスズメバチ、シダクロスズメバチなどを保護する資源保護条例が当時の村議会で可決されました。
そこで、蜂の子捕りの中心地の1つである岐阜県では、クロスズメバチを「へぼ」と呼ぶようなのですが、この「へぼ」愛好家の人たちがクロスズメバチの保護・養殖に取り組んでいるとのことです。