昆虫食入門者が知っておくべき事12選

昆虫食初心者である私が内山昭一さん著「昆虫食入門」を読んで気になったことについてまとめてみました!

「初めて知った!」という内容が多いと思いますので良ければ最後までご覧ください!

昆虫食の歴史

 

ジュラ紀ではかかせない食料だった?!

私たち人類の祖先(原始哺乳類)は恐竜がいる時代、どのように過ごしていたと思いますか?

肉食の恐竜も存在していたと考えられているため、食料確保が困難だったということが容易に想像できます。

ではどのように原始哺乳類は成長していったと思いますか?

ジュラ紀(1億4000万~2億1000万年前)、恐竜に追われていた時代では、夜行性を余儀なくされていたため、原始哺乳類にとって昆虫は重要な食料であったらしいんです。

そしてこの夜行性の中で昆虫を捕まえるために指先の器用さ、優れた聴覚の獲得が見られ、それらが大脳皮質の発達を促した。

また昆虫の多くは不飽和脂肪酸の割合が高いため、これが脳の発達に貢献し、現在の人間のようになっていったと考えられています。

白亜紀(6500万~1億4000億年)の初期に誕生した被子植物との共進化によって地球は「虫の惑星」に変わっていき、高エネルギーの昆虫は哺乳類にとって最適な食料源となり、主食となりました。

今も地球の生物種の半数以上は昆虫であるため、食料難になった場合、昆虫食が重要視されるのは間違いないだろうと思う。

古代からセミの好みは似ていた?!

私たち日本人になじみのある食生活は、縄文時代からすでに農耕が始まり、水田による稲作も始まっており、弥生時代にはお米を主食におかずを食べる食文化が始まり、飛鳥奈良時代には「だし」が使われていたそうなのですが、一方では昆虫は食生活の中でどのような存在だったと思いますか?

セミを食べていた理由は味に秘密がありそうなのです。そしてこの味の好みは変化したと思いますか?

有史時代になると昆虫食についての文献が増加しました。

二つの例を挙げるとまず紀元前4世紀には哲学者アリストテレスの『動物誌』で「地中で最大限大きくなったセミの幼虫は若虫になる。その殻が壊れる前が一番おいしい。成虫ならまず雄で交尾後がよく、ついでに白い卵がいっぱいの雌がおいしい」と記述があります。

またローマ時代には博物学者プリニウスの『博物誌』で古代西アジアのパルティア人や東方の民族はセミを食べており、交尾前は雄を好み、交尾後は白い卵を持った雌を好んだという記述が見られました。

これらのことから、時代が変わっても好みが似ているということが分かり、また長い時代を経ても食べられていることからおいしいことも分かりますね。

なぜ日本ではイナゴは食べられたがトノサマバッタはあまり食べられなかった?

日本ではイナゴは食用として食べられている地域があります。

ではなぜイナゴと形が似ているバッタは食用としてあまり食べられていないか知っていますか?これにはイナゴの昔から受け継がれてきたイメージが関係しているとされています。

昆虫食が忌避されている日本で唯一イナゴはよく食べられている昆虫といえます。ハチの子と並んで食品成分表にも記載されていますが、この理由としてはイナゴに清浄なイメージがあるからだとされています。

昔は稲の大害虫ウンカ類のこともイナゴと呼んでおり、すなわちイナゴは私たちが主食として食べている稲と同じ物を食べている。

このことからイナゴは清浄なイメージが付き、食用に適しているとされたが、大きく食べ応えのあるトノサマバッタは食べられませんでした。

昆虫のイメージは虚像?!

昆虫には害虫と益虫に区別され、私たちが住む日本では益虫よりも害虫の方が先に思いつく人が多いだろう。

自分もその一人でしたが、ではなぜこのようなイメージがついているのでしょうか。実はそのイメージは国家が深く関わり作り上げた虚像であるんです。

明治以降政府は工業化による騒音や悪臭などの環境問題に対抗し、清潔で美しい都市の形成を目指し、その目標を達成するために強制的に害虫の防除を行わせる体制を取り始めました。

また大正期に入るとコレラの予防のためにハエの駆除が叫ばれるようになり、1922年には伝染病予防法が改正され、ハエ、カ、ノミ、シラミなどの昆虫類の駆除が求められるようになりました。

これらの影響もあり、現在の昆虫に対するネガティブなイメージができたと考えられています。

やはり、国が関わったことに対するイメージは強く残るものになることが確認できますね。

人間は脳で食べている?!

この昆虫のイメージは昆虫を食べ物としてみるときにも影響がありそうです。

虫を見て模様が綺麗だなと感じることはありますが、菌や寄生虫が居そうなどと思ってしまいます。

すなわち食品に必要な物は「清潔」ではなく「清潔らしさ」が重要であるとされています。

昆虫以外で例を挙げると検尿カップにビールを入れて飲む事が挙げられます。尿とビールは色が似ているため、気にせずに飲む事はなかなかできません。

このように私たちの綺麗、汚いを決める判断材料は非常に曖昧なものであり、科学的な根拠もなしに好き嫌いを決めているように思えます。

この背景には日本の近代化が急がれたことがあるとされています。

「富国強兵」をスローガンに日本人の体格や健康の増進がはかられた。また明治初期に流行していたコレラなどの伝染病の撲滅も急務でした。

こうした経緯から衣食住が衛生の面で重視されるようになりました。

これは昆虫にも関連していると考えることができ、ネガティブなイメージが植え付けられたために昆虫食は広く食べられなかったのではないかと考えることができます。

採取活動の楽しみは昔から変わらない?!

子供の頃、虫取りや魚釣りをして楽しんでいた人が大抵だと思いますが、この行為をするにあたってなにか目標があってやっていた人はあまりいないと思います。

しかし、カブトムシやクワガタを捕まえたときの達成感は子供にとって大きなものであると思います。

そしてこの行為は近年だけでなく、古くからあったとされています。

採取活動を行い「昆虫を食べること」は古くからあった自然な行為であったとされており、狩猟採取活動として昆虫食を捉えていることが昆虫を食べる一つの動機に挙げられます。

昆虫の生息する環境、餌、時期や場所などの知識と経験を積み重ね、工夫した末に入手困難でおいしい獲物を獲得できた時には誰でもうれしいという感情がこみあげるだろう。

これは現在では「釣りをしておいしそうな大物を釣り上げた!」などの方が日常的ではあると思いますが、昔は「おいしい虫を捕まえた!」ということの方が日常的であったんだろうなと想像できます。

昆虫食ってコスパいいの?!

昆虫食は日本では現在広く食べられていませんが、いくつかの国では好んで食べている場所もあります。自分がパッと思いつくのはタイです。

タイでは屋台で昆虫が売られており、お酒のおつまみやご飯のおかず、スナック感覚で食べたりなど、幅広く食べられているそうです。

しかし世界的に見てみると昆虫が食用として好まれる地域と好まれない地域とがあります。

また好んで食べる地域でもすべての昆虫を食べるのでなく、特定の種を好んで食べる傾向があります。

なぜこのような差があるのか。これは昆虫を人間の食料として見たときの採集効率が関係していると考えられています。

「最善採餌理論」が人間にも適用できると文化人類学者マーヴィン・ハリスは考えました。

これは簡単に言うと捕食者は食用可能な獲物に出会い、追跡し、捕らえ、調理するまでの一連の作業に要する労力を考え、単位時間あたりのカロリー見返り率の高い、最も採集効率の良い獲物だけを選ぶのではないかという考えで、つまりコスト(原価)/ベネフィット(利益)比の良い食材を選ぶということです。

昆虫はタンパク質と脂肪を持つ栄養価の高い生き物ですが、多くの昆虫は採集に手間や時間を要し、大量に手に入るとも限りません。

そのため飼育大型脊椎動物が手に入りやすい地域では昆虫は効率が悪く、大型脊椎動物を手に入れる機会が少ない地域ほど昆虫食を受け入れられるとされています。

この理論により東南アジア、アフリカ、アマゾンなど昆虫の種類が多く大型脊椎動物の種類が少ない熱帯地域では昆虫食が好まれ、ヨーロッパやアメリカ、カナダなどでは昆虫の種類が少なく大型脊椎動物の種類が多いために昆虫食が敬遠されるというデータがあります。

現在、牛肉や鶏肉などが食卓に並んでいますが、資源不足によって供給が不安定になった場合、昆虫の養殖が発展し、私たち日本人の食卓にも昆虫が並ぶ日が来るかもしれませんね。

寿命と昆虫食は関係ある?!

昆虫食がもたらすものの一例として寿命が延びるのではないかという意見があります。そこで平均寿命ランキング上位に入っている長野県について見てみます。

2005年の都道府県別平均寿命ランキングで長野県は男子1位、女子5位で唯一男女ともに上位5位に入っている。長野県衛生部医務課は長寿の要因として3つ挙げています。

①健康活動の成果:減塩と暖房設備の改善のほか、成人病健診等に1965年から取り組み、早期発見・治療などの予防や健康への意識が高まった。

②食生活:タンパク質として川魚、イナゴ、蚕のさなぎ、ハチの子などを食べ、ソバなどの雑穀を食べていた。この雑食がバランスの良い食生活となった。

③地形・気候:山坂が多く、歩行により足腰や心肺機能が鍛えられ、水や空気が綺麗

この3つのうち、①と③は長野県だけには限らないため、②について深く見てみます。

養蚕地帯は信州以外の日本にもありましたが、カイコ蛹をこれほど多く食べるとこはなかったらしく、ハチの子も含め昆虫食が伝統的文化としてすでにあったことが昆虫食を食べていたことに関連しているのではないかと考えられています。これが長寿の秘訣なのかも知れないですね。

しかし世界全体で見てみると昆虫食が多く食べられている東南アジア、アフリカ、アマゾンの平均寿命は高い数値とはなっていないため、寿命を長くする効果はあるかもしれないが医療制度や医療技術の発展の方が効果が大きいように感じました。

昆虫食の味

 

ハチの子と鰻は同じ味?!

土用の丑の日にはウナギを食べますよね?

実は、ウナギ(ニホンウナギ)の個体数は大幅に減少していて、国産のウナギは現在高価なものとなっています。

最近では、その代用としてちくわやなすの蒲焼きが出てきているんです。

そして、それを昆虫食でもやってみようと考えた人がいます。

それは、有名なグルメ漫画『美味しんぼ』。

「見た目からは裏腹に濃厚な味、上等な味、ちょっとウナギの味がする。」といった表現で紹介されたのは、なんと「ハチの子飯」。

『美味しんぼ』の第80巻に掲載されています。

昆虫食入門の中でも、ハチの子飯とウナギの蒲焼きは、「苦みの先味」「うまみ」「しょっぱさ」「苦みの後味」「コク」の5項目で比較して、成分的にもほぼ重なっていることが述べられています。

今、ハチの子飯を食べられるのは、長野県ぐらいでしょうか。機会があったらぜひ食べてみたいですね!

まずい虫とおいしい虫はそれぞれ共通点がある?!

昆虫食は近年注目され始めたが、昆虫食の味についてイメージしにくいだろう。自分が持っている印象としては土っぽいイメージを持っている。このように実際食べてみないと味について大雑把にイメージすることしかできない。「昆虫食入門」ではおいしい虫とまずい虫のそれぞれの特徴が書かれていた。

まずはおいしい虫の特徴を挙げる。共通点として「甘み、うまみ、クリーミー」という点が挙げられる。しかしこれはどのような状態でもこのようにはいかない。鮮度がおいしさの評価に大きくつながる。昆虫は小さいため痛みやすい。逆に言うと鮮度が良いと更にうまみが増すとも考えられる。また、においに癖がないものが食べやすいとされている。

まずい虫の特徴は「臭くて硬い」が共通している。しかしどちらも改善方法はある。まず臭みを取る方法として酢やレモンを使って臭気成分を不揮発化させる方法、片栗粉や味噌で臭気成分を吸着する方法、スパイス等で臭いを消す方法、油で揚げて臭気成分を分解する方法の4つが主にある。硬さの改善方法は粉砕してふりかけとして使う方法、油で揚げて水分を飛ばしサクサクにする方法の2つが主にある。これらから油で揚げるとどちらの問題も解決でき、比較的簡単にできることが分かる。調理学の立場から昆虫食にアプローチしたことは未だになく、未知の領域であるため、今後更においしい昆虫食が出てくるかもしれない。

昆虫食は最近注目されていますが、食べたことがある人は少ないはず。

私も実際に食べるまでは、土っぽいイメージを持っていました。

やはり、食べてみなにと味についてイメージするのは難しいですよね。

しかし、そんな難しい問題に挑戦しているのが、この「昆虫食入門」です。

なんと、おいしい虫とまずい虫の特徴について説明するというハイレベルの戦いをしています。

まず、おいしい虫の特徴ですが、味、鮮度、香りがポイントです。

おいしい虫の共通点としては「甘み、うまみ、クリーミー」という点が挙げられます。

2つめに大切なのは、鮮度です。

これが、おいしさの評価に大きくつながるんですね。

昆虫は小さいため、痛みやすいという特徴があります。

逆に考えると、鮮度が良いとうまみが増すということかと思います。

3つめとして、においに癖がないものが食べやすいとされています。

魚やジビエは匂いがといった問題がありますが、そういった問題がないのが昆虫の強みです!

一方で、まずい虫の特徴は「臭くて硬い」が共通しています。

先ほど、匂いがないという話を書きましたが、どういうことでしょうか。

それは、昆虫が食べているものに関係があるんですね。

たとえば、カブトムシの幼虫は腐葉土を食べています。

そのため、腐葉土の匂いがするため、まずくて食べられません。

食べているものによって、匂いが強いものがあるというのも覚えておいていただけ
ればと思います。

ただ、香りが強い虫も改善する方法はあるんですね。

まず臭みを取る方法としては、

・酢やレモンを使って臭気成分を不揮発化させる方法
・片栗粉や味噌で臭気成分を吸着する方法
・スパイス等で臭いを消す方法
・油で揚げて臭気成分を分解する方法
の4つが主にあります。

硬さの改善方法は

・粉砕してふりかけとして使う方法
・油で揚げて水分を飛ばしサクサクにする方法
の2つが主にあります。

実は、これらの問題を簡単に解決する方法があります。

それは、油で揚げることです。

昆虫を食べる前には油であげてから食べましょう!

筆者の内山昭一先生の話によると、調理学の立場から昆虫食にアプローチしたことは未だになく、未知の領域であるため、今後更においしい昆虫食が出てくるかもしれないということでした。

セミはおいしい!

夏の虫と言えばセミですよね。

木に付いていたり、たまに地面に落ちていることもあって、セミ爆弾と言われたり、うるさいし、怖いしと良いことがないイメージの人も多いのではないでしょうか。

実は、そのセミ食べられるんです。

気になる味はというと、成虫は揚げて食べるとサクサクでナッツの香りとうまみがあります。

幼虫はというと、食べ応えがあり、こちらもナッツの香りがします。味は鶏肉に近い味ですね。

細かい話ですが、セミの種類によっても味が違い、クマゼミはアブラゼミ、ミンミンゼミよりも大きく食べ応えがあり、逆に香りも味も大味で淡泊だということでした。

内山昭一先生は昆虫の臭みを取るには揚げるのが良いということがわかってから、昆虫揚げの商品化を考えたそうです。

しかし、昆虫のおいしさは、これは揚げたてだけで、冷めて時間が経つと身が締まって硬くなり食味が落ちるということがわかりました。

そのため商品化とはならなかったそうです。

臭いや硬さを解決する方法として生み出された、揚げるという手法でしたが、昆虫食を普及させるという点では、まだまだ課題があるようです。

世界のタンパク質不足にはハエが最も有効?!

ハエは害虫だと認識している人が大半だと思います。

しかし、実は食料問題を解決できる可能性がある虫だったんです。

というのも、ハエは衛生的な環境で飼育すれば非常に生産効率に優れた食料であるとされているからなんですね。

そのため、人口増加による食料問題の解決の切り札になると言われています。

その理由としては
・生育速度が早こと
・餌として生ゴミ、動物の死体、腐肉、排泄物まで利用でき、廃棄物処理、物質循環、環境保全にも役立つこと

が挙げられています。

ただ、現状、日本ではハエは害虫として駆除対象になっているため、食べるのには抵抗感がありますよね。

まずは、抵抗感をなくすことからスタートになりそうです。

いかがでしたでしょうか。昆虫食を食べたことのない方々にとっては、かなり貴重な情報を得られたのではないかと思います。

「昆虫食入門」ぜひ読んでみてください。

インターン生 稲見 拓磨