昆虫食へ新規事業展開した狙い ~ハイジェント株式会社に学ぶ

もともと金属加工業を営んでいたハイジェント株式会社さん。

2021年からコオロギの養殖事業に事業展開を行い、11月にはTAKEOさんと一緒に山形コオロギ ガーリックマッシュルーム味を発売。

その経緯と狙いについてハイジェントの根岸さん、栗又さんにお伺いしました!

今回は、インターンの大澤さん、モウさんがインタビューしました。

栗又さん(左)  根岸さん(右)

ハイジェント株式会社について

大澤
会社について教えてください

根岸さん
本業は金属加工業です。
工場は日本では岐阜と山形の二拠点を持っています。山形工場はメッキ加工がメインで、連続したコイル材(コイル状の金属)に銀メッキや錫メッキ等を施す加工を行います。用途は自動車の部品、半導体のリードフレームなどで、また、発光ダイオード(LED)関係のリードフレームへのメッキ加工もございます。岐阜工場は、メッキの事業の他に金属加工(ハーメチックシール)の事業もございます。
コオロギの養殖については、山形工場で行っています。

大澤
コオロギの養殖を始められたきっかけはどういった経緯だったのでしょうか?

根岸さん
会社としての柱はメッキ加工と金属加工の2本の柱となっています。そこで、もう1本柱を作ろうということで、2020年の春に新しい事業を探そうという動きが始まりました。ただ、新規事業を行うとしても、何が売れるかというよりは、環境等に配慮した事業をという視点で探していました。
コオロギの事業については、太陽グリーンエナジーさんの新聞記事を見つけたのがきっかけです。太陽グリーンエナジーさんにお話をお伺いすると、2025年には世界的な食糧不足を迎え、たんぱく源としての昆虫食が注目されているという点。牛や豚などの家畜に比べると育てる際の二酸化炭素の排出量が少ないということなどを伺い、取り組んでみようということになりました。

大澤
社内での抵抗感はありませんでしたか?

根岸さん
どれだけ売れるのかという心配の声はありましたが、環境面の課題解決につながるという部分もあり、会長、社長がまずはやってみようということでスタートしました。
社内の反応は両極端ですね。苦手な人は今でも一切近づきません。関心を持つ人は食べてみて、おいしいねとなってといった感じですね。
山形ではもともとイナゴを食べる文化があるので、子どもの頃に食べたことがある人が多いです。しかし、大人になると食べなくなって抵抗感を持っているという感じでしょうか。

大澤
既存事業との関係は何かあったのでしょうか

根岸さん
全くないですね。山形にしたのは、育てる時に必要な水が豊富にあることと、建物の中にたまたま空きスペースがあったことというのが大きいです。実際には空きスペースの中にパーテーションを作って、そこで空調設備を入れて育てています。建物の中にさらにパーテーションを入れることで、コオロギが脱走しにくくなるという部分もあります。

大澤
昆虫を養殖するにあたって、脱走による環境への影響というものも問題視されているので、そのあたりも十分配慮されているんですね。

根岸さん
やはりきっかけが環境やSDGsの観点からなので、そういった影響は意識していますね。できれば、空調で使う電気も地熱や風力のような再生可能エネルギーにしたいと考えています。また、コオロギのエサについても地域内の資源の循環を活かしたものにしたいと考えているところです。

大澤
山形という地域で取り組まれる強みというのはあるのでしょうか

根岸さん
工場は山形の中でも新庄市にあります。新庄地域はお土産となるようなものが少ないんですね。そのため、地元のお菓子屋さんなどでコオロギを使ってお土産を作ってもらえたら良いねという話はしています。
というのも、山形の人たちは地元意識が強いんですね。そのため、何かやろうとなると、協力的な方が多いんです。

大澤
昆虫食では作ってくれる工場を探すのが大変と聞きますが、そういった課題を山形はクリアしやすい環境にあるということですね。

根岸さん
はい。また、水はすべて井戸水ですし、農業が盛んで、コオロギのエサとなる食材も豊富です。また、土地もたくさんあるので、コオロギの養殖の場所にも困りません。今はまだ1部屋300ケースの部屋のみですが、これの5倍のスペースは確保できています。

大澤
気候はいかがでしょうか。

根岸さん
今年の5月から養殖をスタートしたので、冬はまだ経験していません。コオロギは気温を25度から30度を保たなくてはいけないので、夏はあまり気にしなくて良いのですが、冬は電気代がどこまでかかるか気になります。ただ、暖房効率を上げるために建物の断熱をしっかりすることを意識しました。

モウ
かなり地域色が出た形になっているんですね

根岸さん
今回のTAKEOさんの商品は、山形の舟形で作っているマッシュルーム最上町の特産の赤ニンニクを使っているように、地域色が出た商品でもあります。また、デザイン面では山形で販売しているものだけ少しデザインが違うんです。TAKEOさんにお願いして、ちちろちゃんというキャラクターを入れてもらっています。
地域はまだまだ活気がないと感じていて、そこを少しでも活気づけられればと考えています。

ちろろちゃん

モウ
コオロギの養殖は大変ですか

根岸さん
環境さえ整っていればあまり難しくはないと考えています。ただ、パウダーにしたり、輸入品に価格で対抗するのは厳しいですね。

大澤
そういう点では、自動化や規模の拡大が大切ということでしょうか。

根岸さん
そうですね。

大澤
コオロギは可食部が80%と文献などでは出ていますが、脚や内臓を取っている形なのでしょうか。

栗又さん
私どもで作っているコオロギは100%食べられる状態になっています。コオロギをそのまま乾燥させる形です。水分は飛んでいるので、重さは3分の1程度になっています。

大澤
絶食させたりはしていますか

栗又さん
出荷前には食べたものを出すように、1日水だけにしています。

大澤
その他工夫している点はありますか

根岸さん
やはり鮮度を保つことが大切だということで、仮死状態にして、安楽死のような形をとっているところでしょうか。

大澤
反響はいかがですか?

根岸さん
実は、養殖を開始する際に新庄市役所から記者発表を出しまして、その時には山形新聞、読売の地方版などに出ました。今回の山形コオロギの発売においても、いろいろなメディアで取り上げられています

大澤
売れ行きはいかがでしょうか。

根岸さん
山形県内で6か所販売していまして、先週11月19日(金)に販売を開始して、1週間経っていませんが、300袋は完売していて、追加の200袋もほぼ完売状態です。今、新たに500袋発注しています。(取材日は2021年11月25日(木))

大澤
かなりの反響ですね

根岸さん
実は、取材だけでなく、学校が課外授業でという反響もあるんです。すでに中学校1校と高校が2校が見学に来ています。やはりSDGsという観点の関心が高いのだと思います。
また、このような取り組みをしているということで、取引先にも好評価です。

大澤
やはり企業もSDGsを意識しているところは多いんですね。

根岸さん
中学、高校でもSDGSの授業をしているようで、企業も意識しないといけない時期にきているのだと思います。

大澤
今後の展開についていかがですか

根岸さん
やはり山形県内のお土産になるようなものを作っていきたいですね。そのために、コオロギのパウダー化ができるような取り組みを進めています。
当面はコオロギの増産体制を整えていくということになると思います。
また、コオロギに与えている餌を山形県にある食べ物にして、地域内で循環できるような形にしたいです。
さらには、コオロギの養殖で使うエネルギーを自然エネルギーにしていくといったことも考えていきたいです。

大澤
どうもありがとうございました!