アメリカミズアブをペットフードに。中国の昆虫食企業へ聞いてみた

中国の昆虫食企業、自然創造はアメリカミズアブに着目し、2021年6月に中国初の昆虫由来のタンパク質を活用したドッグフードを開発しました。

その経緯と今後の展望について、商務部担当者馬さんにお伺いしました。

自然創造 http://www.zrcz365.com/

アメリカミズアブに着目したきっかけ

モウ
会社について教えてください。
北京にある昆虫由来のたんぱく質の製造を行っている会社です。中国で最も早くアメリカミズアブ養殖のシステム開発と実用化をした企業になります。
創設者の許岳虎は、大学時代から生物学と環境保護についての研究を行ってきました。その中で、昆虫由来のタンパク質が地球資源を保護する新しい代替たんぱく質になると考えました。
2012年から活動を開始し、2016年に会社設立に至りました。2020年までに、アメリカミズアブの養殖は3期行われ、今年は4代目にあたります。4代目からは商用に販売を開始しています。
人の手に頼る養殖の場合は、品質や生産量が不安定で、病気が発生しやすくなります。そのため、私たちは工場での自動化されたシステムを活用しています
モウ
なぜアメリカミズアブに注目したのですか?
大きく3点あります。
1つはたんぱく質変換効率が高く、他の昆虫に比べて、同じ原料でより多くのたんぱく質に変換できること。
2つめは、ライフサイクルが短く、成長速度が速いので、養殖上非常に効率的だということ。
3つめは、生ゴミを効率的に処理できることです。生ごみという廃棄物を宝物に変えるという環境に優しい素敵な存在です。

アメリカミズアブの養殖について

モウ
アメリカミズアブを養殖する際の餌は何ですか?
中国では生ごみです。というのも、中国の食べ残しは、アメリカミズアブの餌として非常に適しているからです。ヨーロッパでは期限切れの腐った果物、ワイナリーからの蒸留穀物残渣などが餌として使用される場合があります。多種多様なものがアメリカミズアブの餌として使用でき、食品が異なるというのが実際です。そのため、さまざまな食物によって引き起こされるアメリカミズアブの栄養の違いについての研究も行っています。
モウ
養殖における課題は何ですか?
実は、自然環境の中で生息している生き物のためか、工場の中の一定の気温、湿度という環境だと逆に死にやすいんですね。そこが大きな課題となっています。
たとえば、高カロリーの餌を与えると、虫が発する熱が高くなるため、湿度や温度が上昇します。一方で果物をあげた場合は、湿度や温度はそれほど上昇しないんですね。まだその基準というものがしっかりと把握できていない状態です。
モウ
養殖技術はどういった場所で受け入れられていますか?
現状では食品廃棄物処理工場にそれを処理する手段として販売しています。
これまで、食品廃棄物は嫌気性発酵という手法で行われることが多かったですが、嫌気性発酵もすべての問題を解決できるわけではありません。そういった意味で私たちは新たな選択肢を提供していることになります。

中国初!昆虫由来のタンパク質を活用したドッグフードを開発

モウ
開発のきっかけは何ですか?
欧米ではすでに昆虫はペットフードの原料として使われていました。しかし、当時は中国ではまだ入手できませんでした。そのため、2年間かけて昆虫食のペットフードの開発を行いました。国内外の大学や企業に技術支援を行っていただきました。
モウ
アメリカミズアブはどの程度含まれていますか?
23%がアメリカミズアブとなっています。それに鶏肉、果物、野菜などを加えています。今後も昆虫由来のタンパク質の利便性を向上させていきたいと考えています。
モウ
アメリカミズアブをドッグフードに加えると、味にどんな変化が出ますか?
犬が好むか好まないかという反応が違いますね。一番反応が良かったのが23%というものになります。
モウ
製品の反響はいかがですか?
広告はあまりしていませんが、多くの消費者から反響をいただいています。これまで返品や交換といった問題も発生していません。引き続き高品質の製品を通じて顧客の心を捉え、独自のブランドを構築できるようにしたいと考えています。
モウ
価格はどの程度ですか?
比較的高めの価格設定になっていると思います。理由としては、まだ発売したばかりでブランディングができていないということ。品質維持のための生産コストが高く、低価格化が厳しいことが挙げられます。私たちとしては、ペットの健康維持とともに環境保護にも貢献できるような高価格帯の製品づくりをしていきたいと考えています。
モウ
売れ行きはどうですか?
2021年6月から販売を開始しましたが、計画通りの売上となっています。広告をあまりかけていないのに順調に伸びているのでありがたいです。
モウ
他のドッグフードと比べて、優位性はどこにありますか?
栄養面ですね。アメリカミズアブのタンパク質は、魚や鶏肉のたんぱく質より質が高く、犬の毛を明るくするといった機能性も持っています。また、腸の運動を促進し、脂肪を減らす効果があるため、犬の軟便や下痢を改善することもできます。
モウ
賞味期限はどのくらいですか?
18か月です。
モウ
1袋あたりの容量が小さめかと思います。大型犬の場合は足りないのではないでしょうか?
現在、中国で市販されているドッグフードの多くは大きめの袋が多いですが、そうすると長期間保管することになり、カビの原因となります。特に梅雨の時期には、犬の腸疾患を引き起こす可能性が高まります。そのため、ドッグフードには保存料が多く入れられています。私たちはカビを防ぎ、保存料を控えるため、小さなパッケージデザインとしました

今後の展望と将来性

モウ
会社の今後の計画について教えてください。
犬の次ということで猫のキャットフード、人が食べられるスナック菓子、健康食品などの販売を予定しています。
このような取り組みを行うことで3つのことを目指しています。
1つはより多くの人々に昆虫由来のタンパク質の利点を実感してもらうこと。2つ目は昆虫由来のタンパク質のペットフードを通じて環境を保護に貢献すること。具体的には、昆虫由来のたんぱく質のドッグフードは従来のドッグフードよりも、37gごとに1kwの電力を節約できます。3つ目は、発生した経済的利益からさらに研究部門に投資するということです。
モウ
御社の強みはどういったところでしょうか?
安定した自動生産設備と技術については、グローバルな視点から見ても抜きんでていると考えています。実際、国内外の多くの企業にお声かけをいただいています。海外の企業は新型コロナウイルスの影響で話は進んでいませんが、定期的に連絡を取っているところです。
モウ
競合する会社はありますか?
競合は国内も国外あります。
国外の企業は主にヨーロッパで、特にオランダです。彼らも自動化による昆虫の生産に力を入れており、先進的な設備を駆使して原料を加工していますが、大規模に建設する場合は多額の投資が必要です。さらに、産業的な活用にばかり目が行っており、昆虫の生物学的特徴を軽視しがちなのではないかと考えています。この両面を見ることが、コスト削減につながると考えています。
中国国内では、主に人の手を介した養殖となっており、効率が悪くコストが高くなっています。さらに品質や生産量も不安定になりがちです。もちろん自動化を進めている会社もありますが、さらに競争が激しくなり、切磋琢磨していけると良いと考えています。
モウ
現在の課題は何ですか?
研究開発部分では多くの課題がありますが、こちらは本業なので当然対応していきたいと考えています。それとは少し違って、たとえば工場の建設の際には、地域住民の理解を得たりといったことが必要になってくるので、そのあたりの社会的な部分については大変だと感じています。
モウ
SDGsについては意識されていますか?
低炭素化、環境保護は当社の目指しているところで、昆虫はタンパク質変換効率が高いだけでなく、飼育の面で、他の動物よりも温室効果ガスの発生が少ないとされています。そういった点で環境への負荷も小さいため、マッチしていると思います。
会社のロゴ
モウ
会社のロゴはどういった想いで作成されましたか?
かわいい印象を持ってもらえるように擬人化された毛虫のキャラクターとなっています。弊社が現在商品化している昆虫はアメリカミズアブですが、これから他の昆虫も考えています。

社員は普段からアメリカミズアブを食べてます

モウ
昆虫食との出会いはいつですか?
私は湖南省湘西出身で、湘西ではハチの蛹を食べる伝統があります。幼い頃に昆虫を食べたことがありました。その他にも桃花虫、バッタなども食べていました。
祖父の世代はセミを食べていました。素揚げがおいしいですえ。普段も昆虫を食べていますが、アメリカミズアブは煮て、電子レンジで調理します。そうすることで、膨らみが出て、色も美しく、そして小さなエビのようにサクサクした味わいになるんです。
モウ
昆虫食についての考え
近い将来、世界的にタンパク源が不足するため、代替タンパク質はますますホットな話題になるのではないでしょうか。昆虫由来のタンパク質は、従来の動物性タンパク質よりも少ない資源で養殖でき、栄養面では植物性タンパク質にはない利点もあります。昆虫由来のタンパク質は、将来的により多くの人々に受け入れられると思っています。
モウ
今後の展望についてお知らせください。
将来的には、世界へ提供できる企業となり、より標準化され、安定した信頼性の高いアメリカミズアブ製品を市場に提供したいと考えています。
モウ
本日ありがとうございました!

感想

モウ
このたびはインタービュをお受けいただきありがとうございました。初めてのインタービュだったので、うまくいかなかった部分もあったかと思いますが、今後に活かしていきたいと思います。
昆虫由来のタンパク質製造企業は、高度な技術を必要とする新興産業です。欧米の企業がリードしており、中国はまだまだ技術が不足しているため人の手による養殖がメインです。そういった点で、自然創造は先進的だと思います。
最近、中国では昆虫由来のたんぱく質の需要が徐々に高まっており、今後も期待ができると思います。欧米と比較して、中国は昆虫を食べる伝統的な文化があるため、昆虫食が受け入れられやすいといった特徴もあります。
古くから薬用昆虫も中国では非常に人気があります。現在、日本と欧米には昆虫食品専門の会社がありますが、中国にはまだありません。今後も大きく変化していくのではないでしょうか。

セミたまインターン生:モウ イテイ