カブトムシの昆虫食としての可能性がすごい!食料廃棄物活用~株式会社TOMUSHI~

株式会社TOMUSHIの石田陽佑代表取締役とセミたまメンバー

子どもたちに大人気のカブトムシ。そんなカブトムシが昆虫食としても活用できる可能性が非常に高いようです。

菌糸やバナナなどの食料廃棄物を利用し、カブトムシ生産をしている昆虫バイオスタートアップ株式会社TOMUSHIの代表取締役CEO石田陽佑さんにインタビューしました!

わかりやすく言うと、ゴミを食べるカブトムシを活用した事業です。

カブトムシの昆虫食としての可能性を求めるだけでなく、カブトムシを仕事として生きていくことができる、昆虫好きにはとてもありがたい環境が実現しそうです。

カブトムシを昆虫食で活用しようと思ったきっかけ

大澤
御社について教えてください。
石田CEO
設立当初は飼育用の昆虫としてカブトムシを生産・販売していました。最近では食用昆虫の開発も始めました。
大澤
起業のきっかけについて教えて下さい。
石田CEO
きっかけというと、ペットとしてめちゃくちゃ好きだったということですね。実は、一度他の事業で東京で起業した経験があるんです。その時は兄と以前勤めていた会社の同僚と起業しました。しかし、経験が浅かったこともあり、うまくいきませんでした。その時の経験を基に二度と誰かと起業しないと決めて帰ったのですが、兄弟二人ともカブトムシにハマって、一緒に起業するかということになりました。
大澤
昆虫の飼育経験と昆虫食の経験があったということでしょうか?
石田CEO
小さな頃からずっとカブトムシを家で飼っていました。昆虫食の取り組みを始めたのは最近で、2018年に起業してから2年ぐらいはペットや趣味分野で取り組みをしていて、昆虫食を始めたのはその後です。
大澤
1回目の起業の際に経営メンバーが多すぎて会社運営に難しさを感じたということですが、今回は兄弟でどう役割分担を決めたのですか?
石田CEO
私は好きなことに突き進みますが、兄は数字も見られて、経営全般のことがわかります。私が大暴れをしているところ、兄が整えてくれるという関係性になっています。兄は銀行の保証をリスクだと考えるかもしれませんが、私は書類に印鑑を押すだけだと思っています(笑
結果、交渉事は私が出て、兄がバックオフィスということでという役割分担をすることになりました。実際、今回も研究開発の段階で失敗が重なって会社が傾いたことがありました。その時、銀行からの融資を受けたのですが、すべて私が保証をしました(笑

なぜカブトムシは昆虫食に適しているのか。コオロギとの違いは?

カブトムシが昆虫食に適している理由

大澤
なぜカブトムシを昆虫食として活用しようと思ったのですか?
石田CEO
最初はペットとしてカブトムシを育てる時の原価を下げようということがきっかけです。エサを購入するのをやめて、廃棄物の処理ができたらコストが下がるのではということではじめました。
カブトムシの種類によって、うまくいくものからそうでないものもあり、ゴミや廃棄物を食べて、それがタンパク源になるのであれば、ゴミをタンパク源にできるということを発見し、昆虫食の模索が始まりました。
大澤
カブトムシの飼育していくことの延長で、昆虫食になったということでしょうか。
石田CEO
他の昆虫には目もくれないほどカブトムシが好きでした。もともと昆虫食に向いているかなどは考えたこともありませんでした。しかし、調べてみると、世界ではカナブンやカブトムシなどの甲虫類の幼虫が最も食べられていることがわかりました。世界で食べられている理由は、2つあります。1つは、甲虫類の幼虫は、二酸化炭素に集中するため1ヶ所に大量集まるので、収穫が容易だということ。もう1つは、タンパク質が豊富だということです。ペットとしてしか見ていなかったカブトムシが、世界で貴重なタンパク源になっている。特に国連などを中心に2030年には世界でタンパク質不足を迎えるという問題も注目されています。ゴミを減らしながらタンパク質問題の解決にもつなげられるのではと考え、可能性を感じました。

食品及び飼料における昆虫類の役割に注目する報告書とは何か

コオロギとの違い

大澤
昆虫食ではコオロギに取り組む会社が多いですが、カブトムシとの違いはどういうところにあるのでしょうか?
石田CEO
飼育用のエサで言うと、コオロギは食べられなかった食品を食べるフードロスの要素が強いですが、カブトムシはもっと処理が難しいゴミになります。たとえば、きのこの廃菌床は、コオロギは食べません。一方、カブトムシは廃菌床を発酵させることでエサとすることができることがわかりました。大手コンビニチェーンの廃棄弁当もコオロギでは適応できないものが、カブトムシではできるということがわかりました。また、コオロギは栄養バランスを考えたエサが必要ですが、カブトムシはその点はあまり必要ありません。
さらに、カブトムシは共食いもしません。生産効率の高さとして、タンパク源としては他の昆虫よりも良いのではないかと考えています。
大澤
廃棄物を食べる昆虫食となると、食品に含まれる添加物の影響が気になるかと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?
石田CEO
その点については、発酵させることでクリアしています。一度発酵させると微生物を分解するので、問題なくなるんですね。ふぐの毒でも劇薬でも一回発酵させてしまうのと問題がなくなります。そのため、雑食性という意味ではカブトムシが1番かもしれません。
大澤
どういうきっかけでキノコの廃菌床に注目したのですか?
石田CEO
キノコは農業の革命なんです。会社を見ても、単一の植物を育てて上場しているのはホクトや雪国まいたけといったキノコを扱う会社だけになります。植物工場で年間を通して作ることで、大量の安価なきのこが作れるんですね。一方で、大量に育てれば育てるほど、たくさんの廃棄物が出ます。これまでは、自然の山に廃棄してきたのですが、そうすると、それをエサにした大量の野生のカブトムシが出てきます。カブトムシの数が増えすぎないように、自然のバランスを保とう、循環を取り戻そうと思い、再利用することに決めました。
大澤
廃菌床などの廃棄物はどこから取り寄せるのですか?
石田CEO
基本的には生産地に隣接した所でカブトムシを育てています。というのも、廃菌床などは生ゴミで重いため、CO2をたくさん出して運ぶことになります。きのこ農家の隣にファームを作って処理するという形ですね。出荷するときは粉末で軽い状態にして出荷しています。
大澤
他にも自社の菌糸を昆虫用に再利用している会社がありますが、どういった違いがあるのでしょうか?
石田CEO
弊社は、ごみ処理ファームに近いです。秋田と宮城と徳島と香川にファームがあって、全国各地で点々としています。ゴミの場所に合わせて展開している形です。世界ではカブトムシを飼育する文化がないので、日本が発祥なんですね。最近では台湾などにもそういう文化が出てきています。
大澤
飼育する上で病気が発生したりというリスクはないのでしょうか?
石田CEO
そこはカブトムシの面白いところで、コオロギはもともと群れで生きる昆虫ではありません。しかし、カブトムシは群れで生活する生き物です。ヘビなどに食べられてしまうので。
群れて生きていた場合、感染症に1匹感染するとみんなに感染してしまいます。カブトムシも病気になるものが一定数いるのですが、他へ感染するのを防ぐためか、病気が発症する前に地表に上がってきて、乾燥して死んでしまいます。進化の過程でそうなったのだと思います。何度土の中に戻しても地表に出てきてしまうんですね。なので、1つのケースの中で大量に病気が発生して死んでしまうということはないですね。
大澤
カビやダニは出てきたりしませんか?
石田CEO
それは飼い方の問題で、ケースで土を乾燥させないために密閉するとカビが起きてしまいます。そのため、蓋は一切せず、地表はある程度乾燥するようにしていて、ただ乾燥すると水がまかれるようにしています。

カブトムシを素早く大量に育てることができるようになった理由

大澤
養殖しているカブトムシは日本のカブトムシなのでしょうか?
石田CEO
外国産がほとんどで、なおかつゴミを食べられるように種を強くしています。
大澤
何種類くらい飼育しているのでしょうか?
石田CEO
20〜30種類います。よくクワガタはどうですかと言われますが、クワガタはきのこの廃棄前の菌糸を食べるんですね。カブトムシはきのこを育て終わったゴミ(廃菌床)を食べるので全く違います。
飼育しているカブトムシは、通常のカブトムシより成長スピードが早いものを開発して、3ヶ月で出荷できます。また、食料廃棄物を利用した土でも死なないものをかけ合わせて品種改良をしています。
大澤
エサとして栄養剤なども与えているのでしょうか?
石田CEO
入れる場合と入れない場合があります。栄養剤も廃棄物のバナナなどで、すべてで廃棄物を活用しています。
大澤
なぜ3ヶ月という短い期間で育つのでしょうか。
石田CEO
そもそも特殊な種を見つけたということがあります。それは、秋田の氷点下20度の冬でも死なないものでした。さらにその種は農家が何十年も有機廃棄物をこっそり廃棄していた場所で見つかっていたので、有機廃棄物にも適応していました。今は、そこから7〜8世代継いでいる形になっています。

成長が早い理由は、山口大学から論文(高緯度地域の昆虫は素早く成長するか?:外来種を用いた局所適応の解明)が出ています。もととなる種は秋田県大館市で見つけたのですが、冬に氷点下20度まで下がります。南のカブトムシと北のカブトムシでは生活環境が異なり、南のカブトムシは冬眠はしませんが、東北のカブトムシは冬眠をしなくてはいけません。そのため11月までに成長を終えなくてはいけないということで、成長スピードが早い種が育ったんですね。そのため、冬眠をさせなければ半年かからずに成虫になるということになります。

カブトムシを昆虫食として活用していく上での課題

大澤
カブトムシの飼育の大変さはありますか?
石田CEO
飼育においては、他の昆虫に比べると楽だと思います。幼虫はエサを切らさなければ問題ないので、廃棄するゴミと一緒に入れて、2〜3ヶ月に1回エサを交換します。あと、温度は気を使いますね。たくさんいれても、エサさえあれば育つのですが、1ヶ月でフンだらけになります(笑
大澤
フンの活用も考えているところはありますか?
石田CEO
カブトムシのフンは分解前の廃棄物の状態と比べて窒素が増えて炭素が減ることがわかりました。そのため、JAさんからもご支援いただきながら肥料開発を進めています。
大澤
天然のカブトムシとの違いはありますか?
石田CEO
成分的には一緒なので、自然のものでも養殖のものでもそこまで差はないのではないかと思います。

ただ、味については、天然のものは幼虫のまま食べると腐葉土の匂いで美味しくないと思います。内蔵を取った後、オーブンで火を通すと匂いが気にならなくなるということがわかってきたのですが、どうしたら美味しく食べられるかについてまさしく取り組んでいるところです。
特に私たちは廃棄物を扱っているので、乳酸菌のどういう種類を入れると風味が良くなるのかという研究を弘前大学としています。

大澤
弘前大学とは、具体的にはどういった研究になるのでしょうか?
石田CEO
トノサマバッタが専門の管原亮平先生とはフンを除かなくても美味しくする方法を研究しており、エサの価値を高める菌の研究をしている人もいます。時間がかかるものだと思って長期的に研究をやっていければと考えています。
大澤
養殖していると、脱走して生態系に影響があるリスクがあると思いますが、そのあたりいかがでしょうか。
石田CEO
脱走はしないように完全室内で管理しています。
万が一逃げ出しても、海外のカブトムシは冬を越せないので死んでしまいます。なので、生態系への影響は脱走をしても問題がないかと思います。

事業として運営していく中での課題と今後の展望

大澤
会社運営で苦労したことはありますか?
石田CEO
地元に戻ってきた時、あの面白い兄弟が戻ってきて何をするのかと見られていました。そういう期待の中はじめたのがカブトムシということで、めちゃくちゃバカにされました。未だにその偏見はなくなっていません。祖父母が500万円を出してくれたのですが、祖父母も近所からバカにされていました。それが昆虫食にしますよ、ゴミを食べますよということで、地元のメディアが取り上げられるようになると、お宅の孫すごいねと言われるようになってきました。我々もカブトムシも相当市民権を得てきたと思います。
大澤
カブトムシで一環として事業の取り組みをされていますね。
石田CEO
最近では鳥の飼育も始めています。鳥に普通のエサと、カブトムシ(幼虫)を与えると、カブトムシはなくなるのに、普通のエサが残っているんですね。おそらく鳥が好きな匂いを出しているのだと思います。カブトムシなど昆虫の匂いは鳥の食欲にも影響するということもわかってきました。
大澤
カブトムシに事業として取り組む強みはありますか。
石田CEO
カブトムシは産業分類が農業なんですね。そのため、新規就農補助金として、支援もいただける分野のものになります。佐賀県でも導入したいと声をかけてもらって、自治体が前向きなことが強みですね。
大澤
その他の課題としてはいかがでしょうか。
石田CEO
現状では、昆虫食では利益が出せません。そのため、利益を上げる仕組みをペットとして、イベント向けに出荷する必要があると考えています。ゴミの処理に特化した昆虫として、作るだけでなく、しっかりと売れるために出口に気を使っています。
大澤
具体的にはどういった取り組みをされているのでしょうか。
石田CEO
今年はサスティナブルなものを伝えようというイベントをやっていて、子供たちに向けて、ゴミをエサにしたカブトムシ30種類全てに触ってもらって、地球にとって良いカブトムシだと伝える活動をしました。
大澤
今後も同様の取り組みをされていくのでしょうか?
石田CEO
来年からは各都道府県でイベントを計画中です。ただ、夏だけのためにイベントをするのは難しい状況です。そのため、フランチャイズ形式で取り組んでくれる人を募集していこうと考えています。イベントは、1日平均200人来場するので、かなりの利益が出ると思います。
大澤
これからの目標はありますか?
石田CEO
これまでペットとしての取り組みが中心でしたが、今後はタンパク質不足に対してアプローチしたいと考えています。2030年以降のタンパク質危機にしっかり準備をしていきたいです。
現状の売上比率では、昆虫食の売上はほぼなく、なかなか時代が追いついていないのだと思います。昆虫食に取り組む企業は題材は違いますが、同じ課題を抱えていると思います。他社と協力しあって、どう市場を広げていくかが大切かと思います。

これから、世界に展開して、貧困地域で生産工場を作って、食料廃棄物を食べるカブトムシで、雇用を生むことができたら、世界の課題を解決できるようになるのではないかと思います。そうすれば、よりカブトムシも、昆虫も評価されるようになって、すごくワクワクします。やっていること自体が楽しいです。

大澤
本日はありがとうございました!
石田CEO
ありがとうございました!

インターン生:大澤 英輝