「砂漠をバッタが大量に飛び、植物などを食べつくす」
そんな現象をテレビやマンガで見たことがある人もいるのではないでしょうか。
古代エジプト人はこの現象をヘブライ語で神の罰と呼んで恐れ、中国では「蝗害」と表記し天災として恐れられています。
現代でも、2020年新型コロナウイルスの脅威と同時期にアフリカ〜インドにかけて猛威を振るった蝗害がありました。サバクトビバッタの大量発生です。
災害に遭った地域では食糧や農産物が食い荒らされ、甚大な被害が報告されました。アフリカでは干ばつの翌年、大雨が降った時にサバクトビバッタが大量発生するとされています。
そんなサバクトビバッタですが、もしこのバッタを食べることができれば、食糧を始めさまざまな問題が解決するのではないでしょうか?
この記事ではそんな疑問に迫っていきます。
もくじ
サバクトビバッタの食用としての可能性はある?
栄養はあるの?
サバクトビバッタはdesert locustと英語では言います。
食品及び飼料における昆虫類の役割に注目する報告書という国際連合食糧農業機関(FAO)が2013年に発行した報告書では、食用として有効である旨が述べられています。
タンパク質の含有量を比較してみたいと思います。
- バッタ(成虫) 16%
- コオロギ(成虫) 16%
- 牛肉 23%
- サバ(魚) 24%
- ロブスター 18%
という感じになります。(上述FAO報告書より平均値をセミたまで算出)
肉、魚には若干劣るものの、コオロギと同程度の豊富なたんぱく質を含んでいることがわかります。
おいしさはどう?
歴史的には食べられてきた経緯があるようです。その点では、日本のイナゴ、バッタと同様、おいしく食べられるのではないでしょうか。
そう考えていたところ、昆虫料理研究家の内山昭一先生からご示唆をいただきました。
サバクトビバッタは、群生相といって、遠くまで飛べるように成長をしたバッタになるんですね。その過程で脂肪分をできるだけ減らすようになるそうで、固くなって食感が落ちるそうです。
そのため、通常のバッタよりもおいしくないという問題はありそうです。
超えるべきハードルは?
美味しさと言う問題はありつつも、栄養はおそらく十分にあるサバクトビバッタ。昆虫食として活用できるように思います。ただし、実用的に利用されるには超えるべきハードルがいくつか存在するでしょう。
安全性に課題あり
現在、サバクトビバッタの発生を抑えるために、殺虫剤が使われています。
そのため、多くのサバクトビバッタは殺虫剤に汚染されているもしくは、殺虫剤で汚染されている土地で育っているものと考えられます。
そのため体内に殺虫剤の成分が含まれている可能性が高く、人体への影響も否定できません。
1960年代にはすでに大量の殺虫剤が使われ始めているので、これを排除するのは環境的にかなり厳しい状態になっていると言えます。
また、野生のものであるため、何を食べているかわからないというリスクも存在します。
基本的には草を食べていると思われますが、バッタの種類によっては毒バッタというものもいて、毒を持つ草を食べて、それを体内で保管しているものもいます。
サバクトビバッタと毒バッタというのは別の種類になりますが、天然物である限り、そのリスクはゼロとは言えません。
経済性に課題あり(採集コスト)
意外なところですが、大量に存在はしているものの、採集コストがかかるという点が挙げられます。
というのもサバクトビバッタの発生地は都市部ではなく、都市から遠く離れた砂漠だからです。
発生したものを捕獲しても、それを運搬するのにコストがかかります。また、捕獲の方法も確立できていません。
魚の船びき網漁法のように、トラックに網をつけてばーっと捕れるのかもしれませんが、バッタの群れに向かって走るため、視界が遮られたり、トラック内部に入ったりと危険が伴うような気がします。
さらには、1日に100キロを超える移動を伴うため、移動コストもかかってしまいます。そして、毎日拠点が大きく変化すると、運搬の効率も悪くなります。
再現性にも課題あり
サバクトビバッタは毎年ここで発生するというわけではありません。
発生する場所が予想できないんですね。時には、全く発生しない場合もあります。発生しなければそれを仕事としている人は無収入です。
また、場所が変わってしまうと、運搬の方法や搬送先などもその都度変更しなくてはいけないので、ノウハウとしての蓄積が困難です。
そういった点で、毎年確実に実施できるという再現性がないんですね。
そうなると、安定した収入にはつながらないので、ビジネスとしては継続できなくなってしまいます。
サバクトビバッタについてより深く知るには
サバクトビバッタの昆虫食としての可能性について考えてみましたが、その生態についてはまだ謎に包まれた部分が多いようです。
サバクトビバッタについては、日本人で唯一アフリカのモーリタニアでサバクトビバッタを研究している前野ウルド浩太郎さんの本がとても面白いです。
ちなみに、ウルドとはモーリタニアで最高に敬意を払われるミドルネームで、〇〇の子孫といった意味があるそうです。
現地の方から授かった名前ということですが、これだと浩太郎さん本人にもかかわらず、浩太郎の子孫という意味になってしまうのではないかと気づいたところです(笑
また、サバクトビバッタについてインターネット上でもまとめられています。
前野ウルド浩太郎(2020)サバクトビバッタについて 国際農研Webサイト 2020年7月31日
本ページではこれらを参考に考察してみました。
いつかサバクトビバッタが大量発生したら、危険だではなく、豊作だと言われるようになると良いですね。
もともとはイナゴとバッタの違いは何なのかと考えていたら、ここまでに至りました(笑
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