蜂の子は、日本では北海道から沖縄までほぼすべての都道府県で食べられてきたそうです。
今でも、長野県、岐阜県、愛知県、静岡県、山梨県では蜂の子を取って食べるという習慣があります。
日本で食べられる蜂の子の種類
ただ、食べられる蜂の子としてはその種類は限られていて、クロスズメバチになります。
実は、クロスズメバチの中でも2種類に分かれ、クロスズメバチとシダクロスズメバチという2種類になるようです。
この2種類は外見がそっくりなのですが、飛んでいる時の羽音が違うということで、高音なのがクロスズメバチだそうです。
スズメバチ自体は日本には17種類いるのですが、主に食べられているのは2種類ということですね。
ちなみに、日本にはクロスズメバチ属も5種類いるそうです。
クロスズメバチの地方での呼ばれ方
日本全国で食べられていたこともあって、クロスズメバチは地方によって呼ばれ方が違います。
実際、蜂の子を食べる地域ではクロスズメバチといってもあまり通じないのではないでしょうか。
岐阜県の東農地方から愛知県の尾張、三河地方での方言のヘボが一番メジャーな呼ばれ方な気がしますが、他にもジバチ、スガレ、ハイバチ、スガリなどの名前があります。
井伏鱒二のスガレ追ひはまさにクロスズメバチの蜂追いの様子の物語です。
クロスズメバチの一生
クロスズメバチは、多くの蜂と同じく、女王蜂と働きバチに分かれますが、女王蜂だけが冬を越すことができます。
冬を越した女王蜂は4月頃から巣作りをはじめ、卵を産みます。
6~7月になると働きバチが増えてくるので、女王蜂は産卵をするだけになってくるようです。
働きバチは巣の外で昆虫などを捕獲してきますが、それは自分では食べません。
捕獲してきたものは、幼虫にあげるんですね。
では、働きバチは何を食べるかというと、その昆虫などを消化した幼虫から糖分やタンパク質が豊富な液体をもらって栄養補給を行います。
勝手な推測ですが、消化をするためには臓器が発達しないといけないので、重くなるため、飛ぶのには不便です。
そのため、液体のみを摂取する飛ぶのに最適な体になったのではないかと思います。
9月下旬から11月頃になると、オスバチと新女王蜂が羽化し始め、新たに冬を越す準備を始めるんですね。
残された働きバチやオスバチなどは冬は越せないので、死んでしまいます。
巣は毎年新たに作られるので、一度作られた巣が再び使われることはないそうです。
ヘボ祭りが11月上旬に実施されるのは、女王蜂が巣立った後に実施して、翌年の巣づくりに影響が出ないようにといった配慮もあるんですね。
なぜクロスズメバチが食べられるのか
クロスズメバチが蜂の子として人気の理由は何でしょうか。
おいしさ
一つはおいしさがあります。
蜂の子は捕るのが大変なため、買おうと思うと高級でなかなか手がでませんが、食べてみるとクリーミーでとてもおいしいです。
蜂の子を捕る人たちも買うほどではないけど、捕れるなら食べたいという人も多いのではないでしょうか。
ゲーム性
もう1つは、巣をとること自体が面白いということがあります。
蜂の子を捕るためには、その巣を見つけないといけないのですが、その巣の見つけ方が蜂追いと言われる方法になります。
それは、クロスズメバチに餌のついた目印をつけて、巣に持ち帰らせ、それを追うというものです。
目印が大きすぎると蜂がしっかり飛べませんし、小さすぎると見失ってしまうという微妙なバランスが求められる上に、飛ぶスピードが速いため、何人かで協力して行う必要があります。
そして、巣を捕った後もそれで終わりではありません。
その後、巣を大きくするために他の場所で保管し、秋の蜂の子に最適な時まで育てるといったフェーズに移ります。
そういった巣を見つけるといった作業にゲーム性があって面白いという点が挙げられます。
農業との相性
クロスズメバチは、昆虫などをエサとします。
そのため、畑や田んぼの害虫駆除をしてくれる存在ととらえられています。
つまり、農業との相性がとても良かったんですね。
害虫駆除としての相性だけでなく、田植えと収穫の時期の相性も良かった点も大きいです。
田植えはどの地域も7月頃には終わっていると思いますが、7月頃は蜂追いができる時期で、巣を捕獲する時間があります。
また、稲刈りが終わった秋頃に、ちょうど大きくなった巣から蜂の子を捕って食べることができるという形で、農業の傍らにできるものになっていたんですね。
その後、会社務めの傍ら農業を行う兼業農家が多くなり、蜂追いをする人が減っていき、今では若い世代で蜂追いをする人というのは少なくなっているようです。
一方、近年の昆虫食ブームやゲーム性からレクリエーションや営利目的でクロスズメバチを採集するというのも目立っているようで、自然環境の中にいる存在だからこそ、持続性をどうするかといった部分は課題になっていくような気がします。
参考文献 季節のごちそうハチごはん
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