なぜ長野県は昆虫食で注目されるのか。信州四大珍味とは

日本で昆虫が食べられている地域というと、長野県が非常に有名です。

信州人虫を食べるといった本も出ていますし、長野県出身の方にはイナゴなどを食べたことがあるといった人も多いです。

昆虫食といえばなぜ長野県なのか。

その謎に迫ってみました。

信州四大珍味+1

信州4大珍味という言葉をご存じでしょうか。

信州で良く食べられている昆虫4種類のことで、蜂の子、イナゴ、カイコ、ザザムシになります。

珍味というと、変な味の食べ物とイメージしてしまう方もいるかもしれませんが、正しくは、珍しい食材といった意味になります。

中華料理だと、北京ダック、フカヒレ、アワビ、ツバメの巣にあたるものになります。

こう考えると、おいしいものなのだというイメージが伝わるかと思います。

そう考えると、信州人が考える最もおいしい昆虫4選が四大珍味と言えるのではないでしょうか。

蜂の子

スズメバチの幼虫、サナギのことです。

特にクロスズメバチという種類のものが良く食べられています。

蜂の巣を捕って、そこから幼虫などを取り出すため、蜂の巣を見つけなくてはいけません。

蜂追いといって蜂に目印をつけて、巣に戻っていくのを追うといった形で巣を見つけて捕っています。

中には巣が作られた初期の段階で捕って持ち帰り、育てるといった方法も採られているそうです。

佃煮にして売られていることが多いですが、とれたてのしゃぶしゃぶにした蜂の子はクリーミーでおいしいです。

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イナゴ

地域によっては、小学校で児童がイナゴを捕る日があって、それを販売して教材などの購入にあてていたという長野県。

それだけ需要のある食べ物としてイナゴは位置付けられています。

最近は収穫量が確保できないため、東北で収穫したものを販売しているようです。

なんと東北では、バイクにネットをつけてごっそりを収穫するという効率的な方法がとられているようです。

イナゴとバッタは違います。

バッタも同様に捕れるとは思うのですが、食べられるのはやはりイナゴなんですね。

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ザザムシ

長野県の伊那谷で食べられており、世界に食べる習慣がないというのが、ザザムシです。

主にヒゲナガカワトビケラの幼虫のことを言います。

水生昆虫で、天竜川で採られています。

川の中の石をどけると捕れるようです。

ケイ藻類をエサとするのですが、天竜川の流れ出す諏訪湖でケイ藻類が大量発生し、流れ出すため、下流で多く捕れるようです。

捕りすぎでザザムシ漁の時期が制限されているほどで、かつては1日10キロほど捕れたものが、最近では半日で1~2キロに減ってしまっているそうです。

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実は、ここまでの3種類が信州三大珍味といわれるそうです。

カイコ

日本で明治維新以降、生糸の栽培が産業振興策として行われます。

そのため、全国でカイコが飼われることになったのですが、長野県では特に生産技術が高かったようです。

山が多い信州は水田ができにくい一方、カイコの餌になる桑畑に適していたこと。

夏でも涼しい気候を利用して、夏と秋に飼育を行う夏秋蚕が行われていたことなどが理由です。

生糸が必要となる製糸業ではカイコの蛹は産業廃棄物になるのですが、活用しようということで、食べられるようになったようです。

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ゲンゴロウ

四大珍味には数えられていないのですが、先に挙げた信州人虫を食べるで注目されているのがゲンゴロウです。

こちらもザザムシと同じ水生昆虫ですね。

こちらは、信州でも佐久地方限定で食べられていたもののようで、佐久市にはゲンゴロウの会という昆虫食の活動団体があるそうです。

ゲンゴロウは羽を取ってから食べるのだそうで、昆虫食ガチャガチャではそのまま食べてしまったので、正しい食べ方ではなかったのかもしれません(笑

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長野県の昆虫食の特徴

長野県の昆虫食の特徴は、伝統的な食事として今でもそれが続いているということです。

これは、長野県が海に面しておらず、タンパク質の補給を海産物に頼ることが少なかったという部分もあるのかもしれません。

日本で海から一番遠い地点というものが長野県佐久市にあるので、一見こういった見方も正しいようにも見えます。

ただ、長野県にも川があって、川魚は食べることができますし、他の地域でも海に面していないところはあるので、それだけが理由ではないでしょう。

伝統的な食事として続いているといった部分からわかる通り、これらの昆虫は食べるために養殖をされたものではありません

自然との共生の中で生まれた食文化になります。

もちろん、イナゴもカイコも稲作や製糸業の副産物として発生しているものではありますが、イナゴやカイコを食べるために育てていないという部分が近年の昆虫食とは大きく異なっている部分だと思います。

世界の食糧危機に向けた昆虫食という位置づけで考えると、天然物を取りすぎてしまっては意味がなく、養殖が必須になってくると思われます。

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長野県の昆虫食が目立つ理由

昆虫料理研究家 内山昭一氏が長野県出身

セミたまでもお世話になっている昆虫料理研究家の内山昭一先生は長野県出身です。

ご自身の著書でも子どもの頃に家族がカイコのどんぶりを食べていたといったエピソードを披露されており、子どもの頃に昆虫食になじみのあったことから、その後昆虫を食べてみるイベントを実施することにも抵抗がなかったということでした。(参照:昆虫食入門

長野県庁が積極的に取り組む

たびたび登場している信州人虫を食べるは、長野県の職員が中心に取り組みを行っています。

はじめにの部分では太田寛長野県副知事が執筆をされています。

また、長野県の職員有志による信州昆虫食コンソーシアムというものもできています。

長野県内の道の駅でも多くの昆虫食が販売されており、長野県を挙げて昆虫食県としての取り組みが進められていることがわかります。

昆虫食を販売している道の駅まとめ

子ども、高校生、大人までが身近に昆虫食を感じられる環境

2017年の地方創生・政策アイデアコンテストでは、長野県松本県ケ丘高校の昆虫食をサプリメントなどに加工販売するプランが選ばれています。

県だけでなく、高校生までが昆虫食に目を向けているのが長野県なんですね。

伊那市創造館では大昆蟲食博という昆虫食の博物展が2018年から実施されています。

子どもから大人まで幅広い層が来場する博物館での昆虫食展示会の実施ということから、昆虫食への抵抗感の少なさが感じられます。

このような形で、身近なものとして昆虫食をとらえているので、会話に出すことも抵抗がなく、目立っているのかもしれません。