昆虫食とは?昆虫食にも種類があった

昆虫食とは、虫を食べることだと考えています。

ただ、一言で昆虫食といってもいくつかに分類できることがわかっています。

食べる昆虫の生産方法での分類

食べるといっても、どのように食べるかで分類が可能です。

天然

一つは天然ものですね。

自然の中にいる虫を捕って食べるというパターンです。

これまでほとんどの昆虫食がこの分野に該当します。

セミたまで行っているセミ会蜂会は完全にこのパターンです。

これがセミ会だ!セミを捕って食べてみよう。セミ会2019 in多摩2019.7.27

養殖

もう1つは養殖ものですね。

純粋に昆虫を食べるために養殖していた歴史はなさそうですが、絹を作るための蚕はそれに該当するかと思います。

また、完全養殖ではありませんが、クロスズメバチの蜂の子も一部養殖になっています。

最近の昆虫食の盛り上がりの中では、コオロギが養殖技術としては最も進んでいるのではないでしょうか。

コオロギが昆虫食として注目されている3つの理由

産地での分類

国産

産地についても、日本国内で取れている昆虫なのか、そうでないのかというのが分かれます。

伝統的なものでいうと、信州四大珍味ともいわれる蜂の子、ざざむし、イナゴ、カイコは日本産のものが中心です。

ただ実は、イナゴや蜂の子、カイコは人気のため韓国や中国から輸入していたこともあったそうです。

なぜ長野県は昆虫食で注目されるのか。信州四大珍味とは

もちろん、近年では日本でもコオロギの養殖がスタートしています。

有名なのは、無印良品のこおろぎせんべいに使われている徳島大学の例ですね。

なぜ無印良品はコオロギせんべいを開発したのか?

海外産(輸入もの)

日本で販売されている昆虫食は、海外で生産されたものを輸入しているのも多いです。

サソリやタランチュラはもちろん、カブトムシなどもほとんどが輸入ものです。

この理由は単純に日本で捕れない昆虫だからというものと、海外の方が安く捕れるものだからといいうものがあります。

海外のものも、GAP認証のような基準をクリアした工場で生産されたものもあるため、食の安全という面では日本のものも海外のものも同様なのではないかと思います。

昆虫の食べられ方での分類

昆虫を食べるのが、日常食としてなのか、薬としてなのか。

人が食べるのか、動物が食べるのかでも分類が可能です。

日常食用

人が日常食として食べるパターンですね。

これをさらに分けると、罰ゲームとしてなのか、おいしいと思ってなのかというのもわけることができると思います。

伝統的に食べられてきたのはおいしいと思ってといった部分だと思いますし、近年の昆虫食については軒並みこちらの路線での普及を目指しています。

一方で、ゲテモノ、罰ゲームとしてテレビなどで取り扱われてきたという過去もあります。

おいしさよりも、見た目、インパクト重視でむしろおいしくないというのがリアクションとして期待されるパターンですね。

薬用

昆虫は薬として利用されてきた経緯があります。

冬虫夏草などはその典型ですし、セミの抜け殻なども漢方として活用されてきました。

西洋医学の普及とともに目立たなくなってきた部分が多いですが、最近では昆虫の機能性に着目して、健康に良いという観点からの開発も行われています。

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飼料用

魚の養殖や豚や鳥などの家畜の飼料としての活用があります。

まだあまり実用化はされていないようですが、大豆など育てるのに農地や水が少なくてすむ昆虫が飼料として活用されていく可能性はあります。

人とは違って、見た目などのイメージのハードルもないため、活用は早いかもしれません。

ペット(爬虫類、犬、猫)用

コオロギが養殖されてきたのは長らくはペット用でした。

爬虫類を育てている方にとっては、昆虫は必須の食材で、ペットが食べているのを見て、昆虫食に関心を持つという人も多いようです。

最近では、犬や猫の食事にも昆虫食をブレンドさせるという商品が出ているそうで、爬虫類に限らず、哺乳類にまで浸透してきた昆虫食です。

もともと犬や猫は昆虫を食べていると思うので、普通の食事と言えばそうなのかもしれません。

釣り(魚)用

趣味の釣りの餌としての昆虫というのもニーズとしてはあります。

主に幼虫の状態のものをエサとしては活用しており、ブドウ虫とかサシと言われるものは、蛾の幼虫だったり、ハエの幼虫だったりするんですね。

人が食べるものとしての人気はまだないですが、養殖の技術は発展しており、産業として一定程度成熟しているため、昆虫食業界に入りやすい分野ではないかと思います。

国際連合食糧農業機関(FAO)のとらえ方で考えてみる

国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した食品及び飼料における昆虫類の役割に注目した報告書の英語名は、Edible insects Future prospects for food and feed securityとなっています。

つまり、食べられる昆虫類としての報告書が書かれていることになります。

こちらは直訳すると食用昆虫類ですね。

一般的に昆虫食はentomophagyと訳されます。これは、先の報告書のエグゼクティブサマリーでは、consumption of insectsと言い換えられています。

つまり、昆虫類を消費すること、食べることですね。

これは似ているようで、違いますね。

昆虫食に興味があるんだよねと私たちが使う昆虫食は、昆虫を食べることに興味があるという意味で使われると思います。

英語の訳としてはedible insectは食用昆虫。

entomophagyが昆虫食になると思います。

こうやって見てみると、昆虫食と昆虫類を食べることと言えると思いますが、しっかりとした定義をする際には、虫を食べることとするのが良いと考えています。

その理由についてもこれから述べていきたいと思います。

昆虫とは

昆虫食を考える上で、どこまでを昆虫というのかというのも理解しておく必要があると思います。

というのも、昆虫食はゲテモノを食べるというようなイメージで、曖昧になることが多いからです。

昆虫は、節足動物に分類されます。

節足動物というのは、外骨格(がいこっかく)は皮膚骨格とも呼ばれる骨格構造を持つもののことです。

よくわからないと思うのですが、つまり骨が外にむき出しのものですね。

人間はこれとは違って、内骨格になります。

骨は体の中にありますよね。

そんな節足動物に分類される昆虫ですが、実は、節足動物の中には昆虫以外にも分類があります。

それは、甲殻類・クモ類・ムカデ類といったものです。

ここでお分かりの通り、クモ、ムカデは昆虫ではありません

さらに、甲殻類ということからわかる通り、エビやカニも昆虫ではありません。

エビ、カニアレルギーの人は避けるようにと昆虫食を食べる際には言われますが、学問上の分類だと別ものなんですね。

昆虫は食べても大丈夫なの?安全性について考える。

甲殻類・クモ類・ムカデ類と同じような類でわけると、昆虫は昆虫類という分け方がされますが、これは六脚類のことです。

六脚類というのは昆虫と内顎類のことで、3対6本の脚を持っているもののことですね。

かつて内顎類が昆虫に属していた時代があったことが理由のようですが、今では違います。

生物の分類は、どこを起源として進化したかということでの分類なのですが、内顎類は昆虫からの進化ではなく、甲殻類からの進化だということで、別物として近年位置付けられたということで、同じ6本脚でも昆虫から外れたんですね。

改めて整理すると、昆虫というのは6本脚のもの。

そのうち、内顎類ではないものを指します。

昆虫類というと、内顎類も含めるので、6本脚のものはすべて昆虫と言っても良いかもしれません。

そんな目線で昆虫食を見てみると「あれ、これって昆虫ではないな。」と気づくものもあるのではないでしょうか。

ちなみに、昆虫は水の中で生活するものもいて、タガメ、ゲンゴロウ、トンボ、ゲンジボタルなどは水生昆虫と呼ばれます。

ポイントは6本脚ですね。

昆虫を虫としてとらえると

私たちが生活をしているうえでは、昆虫というのは虫ですよね。

では、虫とは何なのか。

これは、学問上の分類ではなく、私たちの生活上で使われる言葉になります。

そのため、6本脚ではないムカデもクモも虫ですよね。

水生昆虫の話で言うと、ザザムシは昆虫ではないことになりますが、虫ですよね。

これは虫か虫ではないかは私たちが決められると言えるのかもしれません。

昆虫食を虫ととらえると、かなり広くとらえることができることがわかります。

英語でも区別はあるようで、昆虫はinsect。虫はbugとなるようです。

実際、FAOの報告書でもinsectの他にbugやwormも出てきます。

昆虫という学問的な定義で考えると昆虫に該当しない虫も出てきますが、実際は虫全般が食べられていますし、FAOでも昆虫以外の虫も含めていることから、昆虫食は虫を食べることと言うのが良いと考えます。

性質面から考える

FAOはなぜこのような定義の仕方になったのでしょうか。

それは、この報告書が私たちの生活に影響のある昆虫の性質に着目したからだと思います。

この報告書の目的は世界が将来迎える食料不足に昆虫食を活用するというものでした。

そして、その理由は主に

  • 動物性たんぱく質を中心とした十分な栄養があること
  • 飼育に水、土地などの資源の消費が少ないこと
  • 飼育の上で温室効果ガスの排出が少ないこと

が挙げられています。

このような虫の性質を元に定義をしたので、昆虫に限らず虫全般としてとらえられたんですね。

学問的な分類は進化の過程での分類で、FAOの場合は虫の食としての性質面からのとらえ方がされているので、学問上とは異なった分類がされたことがわかります。

私たちの生活上でも学問というよりは、このような性質面でのとらえ方をするのが良いと思います。

そのため、どこまでが虫かという明確な定義はできなくなりますが、昆虫食は、虫を食べることという定義にしたいと思います。

はちみつは昆虫食なのか

ここで疑問に思うのが、はちみつは昆虫食なのか問題です。

蜂は六本脚なので、昆虫です。

しかし、はちみつは蜂の集めた蜂が食べる食べ物です。

虫自体を食べるわけではないですね。

そういった意味では、ローヤルゼリーも違いそうですね。

一方で、蜂の子は確実に昆虫食と言えると思います。

ただ、FAOが注目している性質面からいうと、はちみつもローヤルゼリーも昆虫食と言っても良いような気がします。

実際、FAOの報告書では、はちみつはinsect productsとして登場します。

昆虫食として含めていると言えそうです。

ただ、報告書の中で特に注目されているものにはなっていません。

というのも、これはこの報告書の性質に理由があると思います。

つまり、この報告書はまだ昆虫食になじみのない人たちに向けての提言としての報告書だということです。

はちみつやローヤルゼリーについては、ためしてガッテンなどですでに十分取り上げられているので、わざわざFAOが改めて報告書として出す必要もありません。

蜂が作るはちみつ、ローヤルゼリー、プロポリスの違いは?

世界の約3分の2にあたる40億人が食べる文化を持っていない虫そのものを食べることに対して提言していると言えます。

こう考えると、昆虫食というのは、広い意味では虫と虫が作り出すもの全般を食べることと言えますが、FAOが狙っているのは、虫そのものを食べることの普及だと言えると思います。

逆に言うと、昆虫食がまだまだ否定的にとらえられがちな中で、はちみつにしてもローヤルゼリーにしてもこれだけ人気の食品となっているのに、昆虫食だと言われて人気が下がってしまうのも迷惑なのではないでしょうか。

そういう点から考えると、昆虫食は多くの人に食べられる食品になったら卒業していく世界なのかもしれません。

現状ではコオロギの卒業が最有力でしょうか。

コオロギが昆虫食として注目されている3つの理由

おそらく昆虫食といっても、多くの人が日常的に食べるようになるのは人が牛、豚、鳥ぐらいしか肉を食べないように限られた種類のものになっていくと思います。

そういう点では、多くの人に食べられるようになったものは昆虫食ではなく、食材として認められて、はちみつのように昆虫食としての認識を卒業するのかもしれませんし、世界の人々が昆虫を食べることが当たり前になり、肉、魚、昆虫といった並列の位置づけで食材として認識される日が来るかもしれません。

このどちらの未来になるのかは、今後のお楽しみですね。

食品及び飼料における昆虫類の役割に注目する報告書とは何か

参考文献:虫を食べる文化誌(梅谷献二)